ジュール熱とは?公式とともにわかりやすく解説



今回は、ジュール熱について解説していきます。

ジュール熱はセンター試験によく出題されていたので、共通一次試験でもよく出題されることが予想されますし、抵抗を扱う問題では必須の単元になります。

ジュール熱の問題は比較的に簡単なので、ジュール熱について理解できていれば確実に点数を取ることが出来ます。

この記事では、ジュール熱をしっかり理解できるように重力と仕事の関係に対応させてイメージしやすくし、ジュール熱の公式と導出方法を解説していきます。



電場が電荷を運ぶ仕事とジュールについて【復習】

まずは、電場が電荷を運ぶ仕事について解説していきます。

電荷を運ぶ仕事

一様電場E \ [N/C]の中に+q \ [C]の点電荷を置いた時、その電荷は電場から強さqE \ [N]の力を左向きに受けます。

その力によって点電荷が距離d \ [m]運ばれた時、点電荷がされた仕事W \ [J]は、

    \begin{eqnarray*}W=qE\times d \ [J]\end{eqnarray*}

になります。

この時に仕事の単位はN\cdot m=Jになります。

このJジュールと読みます。

電場による仕事と重力による仕事

電場による電荷を運ぶ仕事と重力による仕事は、それぞれ位置エネルギーと想像してもらって構いません。

単位はJ(ジュール)になります。

ジュール熱とは

ジュール熱とは

ジュール熱とは、導体に電流を流すことにより発生する熱のことで、単位は[J]です。また、単位時間当たりのジュール熱のことを消費電力と言います。単位は[W]になります。

電球や電気毛布は電気を流すと熱くなりますが、これはジュール熱が発生しているからです。

ジュール熱のイメージ

このジュール熱は、粗い斜面上に一定の速度で物体を滑らせたときの摩擦力による仕事と対応します。

図のように高さhだけ物体が滑り落ちたときに、一定の速さなので運動エネルギーは変化せずに、斜面による摩擦力による仕事が働きます。

この摩擦力の仕事によって斜面は温められ、発生した熱エネルギーは位置エネルギーの減少分になります。


ジュール熱の公式(ジュールの法則)

ジュール熱の公式(ジュールの法則)

R \ [\Omega]の抵抗をV \ [V]の電源につなぎ、電流I \ [A]t \ [s]間流したとします。

この時のジュール熱は、

    \begin{eqnarray*}Q=VIt \ [J]\end{eqnarray*}

と表せます。また、消費電力は

    \begin{eqnarray*}P=\frac{Q}{t}=VI \ [W]\end{eqnarray*}

になります。

ここで、オームの法則からジュールの法則と消費電力は以下のようになります。

ジュールの法則と消費電力

ジュールの法則

    \begin{eqnarray*}Q=VIt=RI^2t=\frac{V^2}{R}t \ [J]\end{eqnarray*}

消費電力

    \begin{eqnarray*}P=\frac{Q}{t}VI=RI^2=\frac{V^2}{R} \ [W]\end{eqnarray*}

ジュール熱の発生原理

ジュール熱が発生する原因を抵抗の働きとともに考えていきましょう。

導体内に電流が流れる時は、自由電子が流れますが、その自由電子が陽イオンと衝突することが抵抗の仕組みでした。

この自由電子が陽イオンと衝突したときに、導体内の陽イオンは激しく振動します。

この振動によってジュール熱が発生するという事です。

ジュール熱の公式(ジュールの法則)の導出

それでは、ジュールの法則の導出をしていきましょう。

図のように、導体を電圧Vの電源を接続すると、導体内で大きさ

    \begin{eqnarray*}E=\frac{V}{L}\end{eqnarray*}

の電場が発生します。

この電場によって電荷-eの点電荷(自由電子)は、左向きに力

    \begin{eqnarray*}F=eE\end{eqnarray*}

を受けます。それによって自由電子は、陽イオンに衝突しながら左向きに運動します。右向きに進んでいると、自由電子は一定の速度で進むことになります。ここで、陽イオンの抵抗による力は速度vに比例するとし、比例定数をkとします。つまり、右向きにeEと等しい力F'=kvを受けます。つまり、

    \begin{eqnarray*}0&=&eE-kv\\\\\Leftrightarrow v&=&\frac{eV}{kL}\end{eqnarray*}

vが求まります。

自由電子の失ったエネルギーがすべてジュール熱になったとすると、陽イオンによる力F'による仕事が自由電子の失ったエネルギーになります。陽イオンによる抵抗が単位時間当たりに自由電子にする仕事Wは、「W=F\times v」より、

    \begin{eqnarray*}W=eE\times v=\frac{eV}{L}\times\frac{eV}{kL}\end{eqnarray*}

になります。また、導体1m^3あたり自由電子の個数をn個とすると、導体内すべての自由電子が単位時間あたりに陽イオンから受ける仕事W_{total}は、

    \begin{eqnarray*}W_{total}=\frac{eV}{L}\times\frac{eV}{kL}\times nSL\end{eqnarray*}

と求まります。また、抵抗値R

    \begin{eqnarray*}R=\frac{kL}{e^2nS}\end{eqnarray*}

なので、(抵抗値の詳しい求め方はこちら

    \begin{eqnarray*}W_{total}=\frac{V^2}{\displaystyle \frac{kL}{e^2nS}}=\frac{V^2}{R}\end{eqnarray*}

になります。これが単位時間当たりのジュール熱なので、これは消費電力ですが、t秒間の仕事は、消費電力に時間tをかけるだけです。

ジュール熱を用いた問題

問題

抵抗値R_{1}の抵抗Aと抵抗値R_{2}の抵抗Bを並列に電圧Vの電源につなげたときの消費電力を求めよ。

問題の解答

まず未知数を仮定します。

抵抗AとBに流れる電流をそれぞれI_{1}I_{2}とすると、閉回路1周で電圧降下の合計が0になるので、

    \begin{eqnarray*}& & A:0=V-R_{1}I_{1}\\\\& & B:0=V-R_{2}I_{2}\end{eqnarray*}

より、

    \begin{eqnarray*}& & I_{1}=\frac{V}{R_{1}}\\\\& & I_{2}=\frac{V}{R_{2}}\end{eqnarray*}

となり、消費電力は

    \begin{eqnarray*}P=P_{A}+P_{B}=\frac{V^2}{R_{1}}+\frac{V^2}{R_{2}}\end{eqnarray*}

と求まります。

まとめ

まとめ

ジュール熱・・・導体に電流を流したときに発生する熱

ジュールの法則

    \begin{eqnarray*}Q=VIt=RI^2t=\frac{V^2}{R} \ [J]t\end{eqnarray*}

消費電力

    \begin{eqnarray*}P=VI=RI^2=\frac{V^2}{R} \ [W]\end{eqnarray*}

ジュール熱は公式や定義は簡単ですが、原理や証明がかなり難しいので、理解するのに苦労した方も多いと思います。

ですが、かなり重要事項しか書いていないので、必ず理解するようにしましょう。


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