この記事では「磁束線・磁束密度・磁束」について、それぞれの違いと関連する公式についてわかりやすく解説をしていきます。電磁気学の中でもややこしい単元ですが
- これから物理を学ぶ高校生
- 物理を得点源にしたい受験生
に向けて、できるだけ噛み砕いて解説しますので、最後までしっかり読んで理解しましょう!
磁極の強さはどうやって決まる?
磁石にはS極とN極の2種類の磁極がありますが、磁極の強さをWb(ウェーバ)という単位で決めることはこちらの記事ですでに解説してきました。
ですが「磁極の強さ」とはどう定義されるのか?についてはまだ語っていません。1[Wb]の磁極と10[Wb]の磁極を比較すると強さが10倍違うことになりますが、では具体的に何がどう違うのでしょうか?
磁極の強さを考える上で、大切な物理用語が以下の3つです。
- 磁束線
- 磁束密度
- 磁束
それぞれの特徴を一緒に学んでいきましょう。
磁束線
まずは磁束線。定義はこちら。
図に表したように磁極からは目に見えない曲線が伸びており、この線を磁束線と呼びます。例えばm[Wb]の強さの磁極からはm本の磁束線が飛び出していると考えます。

磁束線の本数を磁極の強さとして考える
磁束線と混同しやすいのが磁力線です。1文字違うだけなのでややこしいですが、磁束線の場合は磁場が生じている空間に満たされた物質の性質も含めて決められる物理量で、その点では磁力線とは異なります。磁力線との違いはややこしいので無理に覚える必要はありません。
磁束密度
磁束線の本数で磁極の強さが変わりますが、磁束線の本数は磁場が生じている空間によって変わってきます。真空中なのか空気があるのか金属の中なのかによっても磁場が変わるため、空間を考慮した式で表しましょう。そこで出てくるのが磁束密度です。
磁束線は通常で表し、単位は
(テスラ)または
です。
磁束密度はその名の通り「磁束線が空間に締める密度」のことで、磁束密度と磁場の強さ
[
]には以下の関係があります。
(
:透磁率)
透磁率とは物質の磁化のしやすさを表す値です。
磁束密度と磁場の強さは比例関係にありますが、実際は上記の式のように比例関係にはあまりなりません。例えば鉄のような磁化しやすい物質の場合はその物質自体が発する効果も考慮しなくてはならないのでややこしいです。
ですが高校物理の範囲では真空や空気中のような磁束密度と磁場の強さがシンプルに比例する場合に限られるので安心してください。
磁束密度が電流に与える力
磁束密度は電流に力を与え、その力の大きさは以下の式になります。
磁束密度の大きさはそこを流れる1[A]の電流1[m]の長さが受ける力の大きさに一致します。
上記の式に,
を代入すると
となるわけです。
磁束
磁束密度はある面での磁束線の本数なので、ある面積[
](例えば磁石の端の面積など)に磁束密度をかけることで磁束線の本数がわかります。
(ファイ)を磁束と呼び、単位はWbです。磁極の強さがそこから出る磁束線の本数と考えるなら、磁束は磁極の強さを表していることになります。

磁束=磁束線の本数=磁極の強さ
補足
当記事では磁束線を数える際に「本数」という表現をしていますが、実際には磁束線の値は整数倍になることはなく、少数を含んだ連続値になっています。あくまで便宜上の表現です。
まとめ
最後に大事な要素だけまとめておきます。
磁束線の本数=磁極の強さ=磁束
公式についてはただ覚えるのではなく、磁束線、磁束密度、磁束、それぞれの関係を理解した上で成り立ちを連想しながら覚えましょう。
では、最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメントを残す