ヤングの干渉実験ってなに?わかりやすく解説



この記事では波動の分野で学ぶ「ヤングの干渉実験」についてその歴史から原理原則について解説していきます。

ヤングの干渉実験は「光波の正体は何か?」という本質を見抜くために行われた実験で、この実験によって光波の物理的な性質がどんどん解明されていきました。当記事では、ヤングの干渉実験の歴史的な背景を知ることから解説をスタートしていきます。受験生は普段、物理学の歴史について知ることはあまりないと思いますが、歴史的な背景を知ると単元の理解度も深まるので非常にオススメです。

  • これから物理を学ぶ高校生
  • 物理を得点源にしたい受験生

に向けて、できるだけ噛み砕いてわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後まで楽しんで学んでいきましょう!



ヤングの干渉実験=光の正体を知るための実験

まず、ヤングの干渉実験とはどんな実験か?について。ヤングの干渉実験とは1807年に「光の干渉性」を証明するためにヤングが行った実験で、この実験によって光が波であることが証明されました。

現代では「光=波」というのは中学生でも知っている常識ですが、ヤングが実験によって証明するまで、「光=粒子」というのが物理学での定説でした。当時の「光=粒子」説を提唱していたのが、万有引力を発見したことで有名なあのニュートンです。

17世紀:「光=粒子」説が濃厚な時代

17世紀末、ホイヘンスの原理で有名な物理学者のホイヘンスは、光は波であるという「波動説」を唱えていました。一方、同じ時代に万有引力を発見したニュートンは、光は粒子であるという「粒子説」を唱えます。

当時のホイヘンスの理論もニュートンの理論もどちらも筋が通ったものでしたが、「ホイヘンスvsニュートン」の戦いは、ニュートンに軍配が上がります。

ホイヘンスの説明は筋が通ったものでしたが、光が反射や屈折という光の性質は「光=粒子」でもどうにか説明ができ、しかも当時の物理学界隈ではニュートンが絶大な権力を持っていたため「光=粒子」説が17世紀の常識でした。

いつの時代も人間は権威に流されるもの。人より頭のいい学者でもそれは同じようですが、「光=粒子」説では説明できない現象が19世紀になって発見されました。

19世紀:「光=粒子」で説明できない現象が発見される

「光=粒子」説では説明できない現象とは何か。それが「回折と干渉」という現象です。

こちらの記事でも解説したように、壁をはさんだ向こう側の音でも聞き取ることができるのは、音が波であり、波は回折するという性質を持っているためです。

一方で光の場合は壁で遮ると影ができます。そのため直進する粒子が壁に遮られていると説明ができたため、「光=粒子」説に矛盾はありませんでした。

ですが実際のところ、ごく小さなスリットを抜けた光は、スクリーン上に縞模様を映したのです。もし光が粒子であるなら、スリットの幅が光の粒子より大きい限りスクリーンには一本の線しか映らないはずです。

これによって19世紀になると「光=波」説がより濃厚になってくるのですが、光の回折と干渉を実験で観察し、光が波であることを証明したのがヤングです。

光は波であることをヤングが証明

1807年にヤングは、画像のような実験装置を使って光の回折と干渉を観測します。

ヤングは光源の前にスリットS_0を設置し、さらにその後ろに設置した2つのスリットS_1S_2を通してスクリーンに光を当てました。

もし光が粒子であれば、光は直進して2つのスリットの像ができるはずですが、実際には縞模様がスクリーンに映し出されました。この結果によって光は回折と干渉をすることが観察され「光=波」説が物理学の定説になったというわけです。

ヤングの干渉実験の公式

ヤングの干渉実験の歴史を知ったところで、続いてヤングの実験の公式について学んでいきましょう。

ヤングの干渉実験の公式

スクリーン上の点Pに映った光が強め合う(弱めあう)ための条件は以下の通り。

強め合う条件(明線になる条件):\frac{dx}{l}=m\lambda

弱め合う条件(暗線になる条件):\frac{dx}{l}=(m+\frac{1}{2})\lambda

d:スリットの間隔、x:OPの距離、
l:スクリーンまでの距離、m:0,1,2,・・・

では実際にこの式を導出してみましょう。

公式を導出してみよう

波の干渉の記事で、異なるA点B点から発生した同位相の波の干渉は、以下の条件によって決まることを学びました。

強め合う時:|AP-BP|=m\lambda
弱め合う時:|AP-BP|=(m+\frac{1}{2})\lambda

ヤングの干渉実験は、この式を応用したものです。

スリットS_0を通した光は位相が揃っている(同位相の波)ため、波の干渉の公式から考えると、2つのスリットを通過した光の経路差が以下の条件の時、スクリーン上には明線(暗線)が映し出されることになります。

明線:|S_1P-S_2P|=m\lambda
暗線:|S_1P-S_2P|=(m+\frac{1}{2})\lambda

光路差|S_1P-S_2P|をもっと簡単な式で一般化することができれば、公式が導き出せそうです。

ヤングの干渉実験では通常「スリット間の距離dはスクリーンまでの距離lより十分小さい」とみなすことができます。スリットの間隔は数mmほどで、スクリーンの距離は数mほどありますからね。

すると、S_0PS_1PS_2Pは平行な線であるとみなすことができてしまいます。この時、\angle{PS_0O}=\thetaとすると、画像のように\angle{S_1S_2H}=90^{\circ}-\thetaが成り立ちます。すると図のように\angle{HS_1S_2}=\thetaが成り立つのです。

上記の画像は説明のために拡大して書いていますが、実際の光路差は差がわからないくらい小さな距離のため、\angle{PS_0O}\thetaに近似できるということですね。

この時、\triangle{S_2S_1H}\triangle{PS_0O}を比較してみましょう。

紫三角形と赤三角形を比較

すると以下の式が成り立ちます。

S_2H=dsin\theta・・・①

ここで\thetaが十分小さい場合」の近似を考えてみます。この時、

sin\theta{\fallingdotseq}tan\theta{\fallingdotseq}\frac{x}{l}・・・②

が成り立ちます。「???」となった人も多いかもしれませんが、実際に図に書いてみると、\thetaが十分に小さい場合、三角形の底辺と斜辺の長さはほぼ差がないので、②式が成り立ちます。

あとは①式に②式を代入すれば

S_2H=\frac{dx}{l}

となり、干渉条件と組み合わせることで、

明線:\frac{dx}{l}=m\lambda
暗線:\frac{dx}{l}=(m+\frac{1}{2})\lambda

上記の2式が導き出される、というわけです。

ヤングの干渉実験の公式は、ぜひ自分でもその導出過程を練習して実際に導き出してみてください。


まとめ

ヤングの干渉実験の原理原則がしっかりと理解できるまで、繰り返し記事を読み込んでください。読み込んで理解できたら、知識を定着させるために問題集などで例題も解いてみましょう。

では、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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