交通事故などで車がペシャンコになっているシーンがありますが、物体の衝突を考えるときに物理学の世界では運動量と力積という概念を考えます。
本記事では初心者でも分かるよう、運動量と力積についてわかりやすく解説します。
問題:2階から落としたコップを割らない方法
今回のテーマはちょっとした日常的な例を交えながら考えてみましょう。では問題です。

コップを割らないためには?
例えばパラシュートをつける、梱包材で包む、下にクッションを引くなど、ガラスのコップを2階から落とした時にそれを割らないための対策はいくつか思いつくと思います。
では、その対策が物理的にどのような意味を持つのか?ということまであなたはきちんと説明できるでしょうか?
物体と物体が衝突する時にどんな物理法則が働いているのかを調べるために、運動量と力積という概念を新しく勉強しましょう。
運動量と力積

運動量と力積
例えば速度で移動する質量
のある物体に、力
を
の間だけ加えたとしましょう。この時、力を加えた後の物体の速度が
になった時、物体に働いた加速度
は
となります。
次にこの物体についての運動方程式を立ててみましょう。運動方程式に加速度を代入して整えると、以下の式が導き出せます。
ここでで表せる部分を運動量、
で表せる部分を力積と呼びます。この式は「物体の運動量の変化量はその物体が受けた力積に等しい」ことを表しています。
では、運動量と力積はそれぞれどのような意味を持っているのでしょうか?
運動量とは
まず運動量の定義はこちら。


運動量:mv
運動量の定義はそのまま質量と速度の積で、向きと大きさを持つベクトルです。
ここで大事なのが運動量が物理的にどんな意味を持つのか?ですが、運動量は「物体の運動の激しさ」を表す物理量です。つまり物体は質量が大きく速度が速いほど、その運動は激しさを増すということを表しています。
例えば時速100kmで飛んできた野球ボールにぶつかっても軽いケガ程度で済むかもしれませんが、時速100kmのダンプカーとぶつかれば大ケガでは済みませんよね。またいくら軽い野球ボールといっても、それが時速200kmで飛んできたとしたら打撲では済まないでしょう。
このように、運動の激しさは物体の質量と速度で決まり、それを決めるために運動量という物理量が発明されました。
力積とは
では、次に力積について考えましょう。
力積とは、物体に働く力の大きさと力が働く時間の積で表される物理量で、物体の運動量をどれだけ変化させたかを表す。
運動量:
力積は「物体に与える力がどれだけ効率的か」を表す物理量です。つまり力が大きくその力を加える時間が長ければ長いほど、物体の運動は変化させやすいということです。
例えば重い荷物を押す時も人数が多ければ多いほど押すのは簡単ですし、人数が少なければじっくり時間をかけて押してあげたほうが勢いよく動きます。
落としたコップを割らないためには?
では冒頭の問題の解答に移りましょう。コップを割らないための対策はパラシュートをつける、梱包材で包む、などです。これらが物理的にどのような意味を持っているかは、以下の運動量と力積の関係から求めることができます。
この式をコップを2階から落としたケースに当てはめて考えてみましょう。
この時地面に衝突する直前の速度がで、衝突した後にその速度は0になります。つまり衝突の後には物体の運動量が0になり、その間の変化量が力積で表されるということになります。
上記の式より
こちらの式を変形すると以下の式が成り立ちます。
……①
①式にマイナスがついているのは、加える力が速度と逆向きのものになるためです。力を加えて物体の運動が止まるのですから、当然ですね。
①式から分かることは、衝突の際に加わる力の大きさは、物体の速度に比例し、衝突時間に反比例するということです。つまり衝撃を和らげるためには
①物体の落ちる速度を落とす
②衝突時間を可能な限り長くする
の2つの方法が考えられます。
例えばパラシュートをつければコップの落下速度は落とすことができますし、梱包材で包んだり下にクッションを引けばそれらが変形することでコップに力を加える時間を長くかけることができますから衝撃を和らげることができますね。
このように、日常的な物理現象もきちんと原理原則を理解すれば数式を使ってその理由を説明できるようになるのです。
本記事を動画でわかりやすく解説
本記事についてはこちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
力積とは力が加わる効率を表す物理量で力と力を加える時間の積で決まる
以上が運動量と力積の基本的な性質です。
運動量保存則などの応用についてはおいおい本ブログでも取り扱っていきますから、まずは基本的な内容を押さえておきましょう。
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