交通事故での車の衝突や力士の立会いなど「ぶつかる」という行為は日常的にもよく見る光景ですが、それらは物理的にどのような意味を持っているのでしょうか?
本記事では運動量保存の法則を、日常の例を交えながらわかりやすく解説していきます。
運動量保存の法則
ではまずはじめに運動量保存の法則とはどんな法則なのでしょうか?
運動量保存の法則とは、物体と物体が衝突したときその前後で運動量の総和は保存されるという法則。
速度で移動する質量
の物体と、速度
で移動する質量
の物体が衝突したのち、それぞれの速度が
、
に変化したとする。このとき、以下の式が成り立つ。
ただし、上記の式は内力だけが働く場合のみに成り立ち、外力が働く場合は運動量保存の法則は成り立たない。
運動量保存の法則とは、物体と物体が衝突したときにそれぞれの物体が持つ運動量の総和は変化しないという法則ですが、この法則が成り立つためにはある条件があります。
その条件とは、それぞれの物体には外力が働いていないということです。外力とは物体の外部から働く力のことで、摩擦力や空気抵抗などの外力が働いている場合は運動量保存の法則は成立しません。
厳密には運動量の総和は一定なのですが、床や空気中の分子なども衝突の影響を受けるため、物体と物体のみの間では運動量は保存されないということです。
運動量保存の法則の証明
運動量保存の法則の式がどのように導き出されるかについて、実際に証明をしてみましょう。

衝突する2つの物体
空気抵抗や摩擦力などの外力が無視できる状態で2つの物体が衝突したとき、それぞれの物体の運動量がどのように変化するかを考えます。
衝突の瞬間、物体1が物体2に時間で力
を与えたとしましょう。このとき、作用反作用の法則から物体2は物体1に対して
の力を与えることになります。運動量の変化はそれぞれの物体に与えられた力積に等しいので、以下の2式が成り立ちます。
……①
……②
あとは①式と②式からを消去して整理すると以下の式が導き出せます。
この式によって、運動量の総和は変化しないということが証明されました。
問題:小柄な相撲取りが相撲で勝つには?
余談ですが、本ブログ管理人は漫画が大好きです。特に少年ジャンプはもう15年ほど読み続けているのですが、そちらで連載中の「火ノ丸相撲」という相撲漫画がかなり好きです。主人公の火ノ丸は身長160cmにも満たない小兵力士なのですが、自分の何倍も体格の大きな力士に真っ向勝負を挑んで倒していくシーンがものすごく爽快です。
では、現実の世界で自分の何倍もの体重の力士にぶちかましをしても戦うには、物理的にどのような能力が必要なのでしょうか?今回勉強した運動量保存の法則から一緒に考えてみましょう。
小兵の力士が自分の何倍もの体重を持つ巨漢の力士にぶちかましをしても打ち負けないためには、物理的にどのような能力が必要だろうか?
小兵が相撲で勝つ方法
運動量保存の法則を考えると、ぶちかましの前後での運動量の総和は常に保存されなければなりません。ぶちかましで小兵の力士が巨漢の力士に打ち負けていないとすると、ぶちかましの後にその運動量は0にならないといけませんから、小兵の力士と巨漢の力士の質量をそれぞれ、
とすると
……③
上記の式が成り立ちます。もしこのとき右辺が0でないとするならば、どちらかが勝ってどちらかが負けてしまったということです。
この③式は、それぞれの力士の運動量は同じ大きさで勝つ向きが逆であるということを表しています。質量については明らかに巨漢の力士が勝っていますから、小兵の力士が巨漢の力士に勝つためには速度で上回るしかないということ。ぶちかましの際のスタートダッシュが小兵の力士の勝敗を分けるということです。漫画の火ノ丸はスピードで体格差を補って勝っているということですね。
このように物理が少しわかるようになると、日常を見る目も少し変わって面白いですよ。
まとめ
運動量保存の法則:物体同士が衝突したとき、それぞれの物体に外力が働いていない場合、それぞれの物体の運動量の総和は保存される。
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