力学的エネルギー保存則って何?わかりやすく解説



本記事では力学的エネルギー保存則についての解説を誰でもわかるように丁寧にしていきます。
力学的エネルギー保存則は力学の集大成とも言える分野ですので、ぜひ本記事で一緒にマスターしていきましょう!



力学的エネルギーとは?

そもそも、力学的エネルギーとは一体何を表すのでしょうか?力学的エネルギーの定義とは以下の通りです。

力学的エネルギーとは
力学的エネルギーとは、物体の持つ運動エネルギーと位置エネルギーの和

力学的エネルギーとはつまり運動エネルギーと位置エネルギーを合わせたものということです。
位置エネルギーについては複数のものがありますが、力学的エネルギー保存則の分野では重力の位置エネルギーとバネの弾性力の位置エネルギーの2種類が出題されることがほとんどです。応用編として時々、静電気力を組み合わせた問題が出題されます。

運動エネルギーと位置エネルギーについてより詳しい解説を知りたい方は、下記の記事をぜひチェックしてください。

 

力学的エネルギー保存の法則

では力学的エネルギー保存則とはどのようなものでしょうか?その定義はこちら。

力学的エネルギー保存則とは
保存力のみが仕事をするとき、物体の力学的エネルギーの総和は常に一定になる。
運動エネルギーをKと位置エネルギーをUとしたとき

力学的エネルギー保存則:K+U=(一定)

つまり、物体の運動エネルギーと位置エネルギーの総和は常に増えたり減ったりせず一定になるということです。

ここで注意したいのが、力学的エネルギー保存則が成り立つのは保存力が仕事をした場合のみということです。例えば摩擦力が働いたり、空気抵抗を考慮しなければならない場合、摩擦も空気抵抗も非保存力なので力学的エネルギーの総和は保存されません。では、一体保存力とはどのような力なのでしょうか?

捕捉:保存力と非保存力

保存力とは一体なんでしょうか?保存力の定義はこちらです。

保存力の定義
保存力とは位置エネルギーを定義できる力のこと。

位置エネルギーを定義することができる力を保存力と呼びます。保存力とは逆に位置エネルギーを定義できない力を非保存力と呼びます。

保存力と非保存力については以下の記事に詳しく解説していますので、合わせて読んでみて下さい。

【合わせて読みたい】
保存力ってなに?わかりやすく解説してみた

非保存力が仕事をする場合

保存力が仕事をする場合のみ力学的エネルギー保存則が適用されますが、我々の世界では宇宙空間などでなければ常に物体は摩擦や空気抵抗(非保存力)の影響を受けます。

つまりよほど特別な環境でない限り、現実世界では力学的エネルギー保存則は適用されないのです。では、どのようにして考えれば良いのでしょうか?

例えばブレーキをかけた車のタイヤは摩擦の影響で熱を帯びますよね。他にも野球のボールをピッチャーが投げて、それをミットで受けるとバシッと音がします。これは、物体の持つ力学的エネルギーが熱エネルギーや音のエネルギーに変換されたということです。

つまり摩擦力などの非保存力が仕事をした場合は、力学的エネルギーが熱エネルギーなどの他のエネルギーに変換されるだけであって、実はエネルギーの総和は変わらないということです。力学的エネルギー保存則はエネルギーの概念をわかりやすく理解するために、そういった非保存力がする仕事を除外して考えた場合の法則なのです。

ちなみに熱エネルギーや音エネルギーの計算は難易度が高いので高校物理の分野では出題されることはほぼありません。力学的エネルギー保存則に関連する出題がされる場合、必ず摩擦と空気抵抗を無視できる条件での問題が出題されますから、安心して大丈夫ですよ。

 


力学的エネルギー保存則の簡単な演習

力学的エネルギー保存則の問題の頻出問題の一つが、力学的エネルギー保存則を利用して物体の速度を求めるというものです。簡単な例題を一緒に解いてみましょう。

問題

問題
大きさを無視できる質量mの物体を高さhの位置から斜面をゆっくり滑らせた。この時、地面に到達した時の速度vを求めよ。重力加速度の大きさをgとし、摩擦と空気抵抗は無視できるものとする。

制限時間は5分です。実際に解いてみてから下の回答を見ることをお勧めします。

回答

ではこの問題を解いてみましょう。まずは問題の条件の確認からです。条件を確認すると、摩擦力と空気抵抗は無視できるとあります。この物体に仕事をするのは保存力である重力のみですので、力学的エネルギー保存則を使うことができます。
(※垂直抗力も働いてるけどどうなの?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、垂直抗力は常に運動の向きと垂直に働いているので物体に対して仕事をしません。仕事が苦手な人はこちらの記事を参考に)

この時もう一つ決めなければならないのが物体の重力の位置エネルギーの基準面です(基準面については位置エネルギーの記事で詳しく解説しています)。この場合の基準面は地面に設定した方が計算がやりやすいですね。

よって力学的エネルギー保存則より物体のはじめの位置の力学的エネルギーと地面に到達した際の力学的エネルギーを比較すると

0+mgh=\frac{1}{2}mv^2

上記式の左辺がはじめの位置の力学的エネルギーの和、右辺が地面に到達した際の力学的エネルギーの和です。初めは物体をゆっくり滑らせたという条件から運動エネルギーが0に、地面に到達した際は物体が基準面にいることから位置エネルギーが0になります。解説の都合上ゼロを書きましたが、実際の回答を書くときにはゼロは書かないでも大丈夫です。

あとはこの式を変形してvについて整えると

v=\sqrt{2gh}

これで物体の速度を求めることができました。

 

本記事について動画でわかりやすく解説

本記事についてはこちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

 

まとめ

まとめ
  • 保存力のみが仕事をするとき、物体の力学的エネルギーの総和は常に一定になる。
  • 保存力とは位置エネルギーを定義できる力のこと
  • 非保存力が仕事をするときはあくまで力学的エネルギーが消費されただけでエネルギーの総和は変わらない

本記事で紹介した例題はごくごく基礎的なものですから、ぜひ問題集などで他の問題も解いてみてください。
特に位置エネルギーの基準面の設定などは忘れがちですから、何度も練習して得意分野にしちゃいましょう!

 

力学についてさらに詳しく勉強したい方は、こちらのまとめ記事をぜひ参考に↓↓↓

【力学についてもっと詳しく学ぶ】
力学の要点まとめ【物理の偏差値を上げる方法】

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