コイルを交流電源につなぐとどうなる?わかりやすく解説



この記事では「交流電源にコイルをつないだ場合の特徴」についてわかりやすく解説をしてきます。今回解説する内容は交流の中でも特にややこしい「RLC直列回路」を学ぶための基本となる大事な知識です。

  • これから物理を学ぶ高校生
  • 物理を得点源にしたい受験生

に向けて、できるだけ噛み砕いて解説しますので、最後までしっかり読んで理解しましょう!



交流電源をつなぐときは位相に着目しよう

抵抗に交流電源をつないだ場合、電圧と電流の位相に差はない(同位相)ということがわかっていますが、コイルの場合は違います。詳しくはこちらの記事を参照してください。

【合わせて読みたい】
抵抗を交流電源につなぐとどうなる?わかりやすく解説

交流電源は時間によって電圧と電流の向きと大きさが変化しますが、交流電源にコイルをつなぐとき、コイルの自己誘導の影響で電圧と電流の位相にずれが起こります。

電圧と電流の位相にはどのような違いがあるのでしょうか?

コイルに交流電源をつないだ時の特徴

コイルに交流電源をつないだとき、電圧と電流の位相には以下のような差が出ることがわかっています。

コイルに交流電源をつないだ場合

コイルに交流電源をつないだ時、電圧より電流の位相が\frac{\pi}{2}だけ遅れる

コイルに交流回路をつないだ場合、電圧よりも電流の位相が\frac{\pi}{2}だけ遅れます。これはそのまま覚えても良いのですが「なぜ\frac{\pi}{2}遅れるのか?」を原理から説明できるようにしておきましょう。


なぜ電流の位相は電圧より遅れる?を2パターンで解説

電流の位相が電圧より\frac{\pi}{2}だけ遅れるのは、コイルの自己誘導が関係してきます。

今回は

  1. コイルが自己誘導を起こす過程をイメージ
  2. 積分を使った証明

の2パターンで位相が進む理由を解説していきます。

パターン1:コイルが自己誘導を起こす過程をイメージで解説

画像のような交流回路を考えましょう。

交流電源とコイルを直列につなげる

コイルの電圧と電流は以下の①〜④の流れで変化していきます。

  1. 電源を入れてからしばらくするとコイルにかかる電圧が最大になります。しかし、コイルは電圧の変化を打ち消すような向きに自己誘導を起こすので、電流は徐々に流れます。
  2. ①の状態からしばらくするとコイルの自己誘導が徐々に収まり最大の電流が流れるようになりますが、交流電源の電圧が①とは逆の向きに働くようになります。ですがコイルは変化を打ち消す向きに自己誘導するため、電流は少しずつ逆の向きに流れ始めます。
  3. ①の状態とは逆向きに交流電源の電圧が最大になりますが、電流はコイルの自己誘導の影響で遅れて流れます。
  4. ②に戻り、繰り返します。

文章で説明するとイメージしにくいので図解で考えてみましょう。

電流が電圧より4分の1周期だけ遅れる

コイルが起こす自己誘導の影響で、電圧が最大になった後に電流が流れます。この時の位相が\frac{\pi}{2}だけ遅れると理解できればOKです。

パターン2:積分を使って解説

コイルを交流電源につないだ場合の位相のずれは、積分を使ってより正確に証明することができます。

ちなみに積分を使った証明は高校物理の範囲外なので大学受験の問題で出題されることはまずないので、極論理解しなくても問題ありません。

ですが前述したイメージを使って理解するパターンと違い、数式できちんと証明できるので、理論的に覚えることができます。積分で証明する流れは押さえておきましょう。

パターン①と同じ回路について考えます。

交流電源とコイルを直列につなげる

この回路に流れる電流Iの式を導き出して、電源の起電力V=V_0{sin}{\omega}{t}と比較して位相がどのように変化するか考えましょう。

コイルの誘導起電力をV_Lとした時、以下の式が成り立ちます。

V_L=L|\frac{\Delta{I}}{\Delta{t}}|(L:コイルの自己インダクタンス)

ここでキルヒホッフの第2法則から、電源の起電力とコイルの誘導起電力には以下の関係が成り立ちます。

V=V_L

V_0{sin}{\omega}{t}=L\frac{\Delta{I}}{\Delta{t}}

\frac{\Delta{I}}{\Delta{t}}=frac{V_0{sin}{\omega}{t}}{L}・・・①

①式の左辺は「Iをtで微分する」ことを表します。①式の両辺をtについて積分してみましょう。すると以下の式が成り立ちます。

I=\int{frac{V_0{sin}{\omega}{t}}{L}}dt=frac{V_0}{L}\int{{sin}{\omega}{t}}dt

sin\omega{t}の積分は-frac{1}{\omega}cos\omega{t}なので

I=frac{V_0}{\omega{L}}(-cos\omega{t})・・・②

電圧の式と比較するために②のcosをsinで表してあげましょう。-cos\omega{t}=sin(\omega{t}-\frac{\pi}{2})なので以下の③式が導き出せます。

I=frac{V_0}{\omega{L}}sin(\omega{t}-\frac{\pi}{2})

電圧と電流それぞれの位相を比較すると、電圧より電流の方が位相が\frac{\pi}{2}だけ遅れていることがわかりますね。

誘導リアクタンス

③式の右辺のfrac{V_0}{\omega{L}}I_0としましょう。この時以下の式が成り立ちますが、この式、何かの形に似ていませんか?

V_0=\omega{L}I_0

そう、オームの法則V=RIと同じ形をしています。この式の\omega{L}誘導リアクタンスとよびます。

コイルには誘導起電力が生じるため一種の抵抗としてみなすことができ、誘導リアクタンスはコイルの抵抗値に当たるものになるというわけです。

ただし誘導リアクタンスが適用できるのは交流電源につないだ時のみなので、注意してください。

誘導リアクタンス:\omega{L}

コンデンサーを交流電源につないだ時はどうなる?

コイルに交流電源をつないだ場合を当記事では解説しましたが、コンデンサーをつないだ場合も電圧と電流の位相には違いが生まれます。

どんな違いか?を以下の記事でわかりやすく解説していますので合わせて参考にしてください。

【合わせて読みたい】
コンデンサーを交流電源につなぐとどうなる?わかりやすく解説

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

交流電源をコイルにつないだ場合の基本について、理解できましたか?


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