重力による位置エネルギーわかりやすく解説



本記事では重力による位置エネルギーについて物理初心者でも簡単に理解できるようにわかりやすく解説していきます。



高いところにある=エネルギーをもつ

木から落ちた熟れたみかんは、地面に落ちると潰れてしまいます。2階のベランダから植木鉢が落ちた時、人に当たれば怪我をさせてしまうことになります。これらの現象はあなたも当たり前のことだと理解していると思います。高いところからモノが落ちてくると危ないということは誰でも知っているはずです。

では「高いところから物体が落ちるということは物理的にどのような意味を持っているのか」について、あなたは具体的に説明できるでしょうか?

高いところから落ちた物体は、ほかの物体を移動させたり変形したりする能力を持っています。
こちらの記事でも解説したように、エネルギーとは「物体が持つ仕事をする能力のこと」なので、高いところにある物体は仕事をする能力を持っている、つまり何かしらのエネルギーを持っているということです。高い位置にある物体が持つエネルギーを重力による位置エネルギーと呼びます。

例えば2階から落ちたものが人にぶつかってしまったとき、それが軽いみかんであれば大ごとにはならないでしょうが、金属製の工具だったら怪我をします。また、例えばもしその金属製の工具が2階から落ちたのでなく10階から落ちたのだとしたら、人にぶつかれば確実に大怪我ですし当たりどころが悪ければ死んでしまうでしょう。

これらの日常的な例からも、重力による位置エネルギーとは物体の質量が大きくなればなるほど、また物体の位置が高くなればなるほど大きくなるものであることは予想がつくとは思います。物理で大切なのは、そういった日常的な物理現象の本質を数式や公式を使って誰でも理解できるようにすることです。
では重力による位置エネルギーとは、一体どのような数式で表されるものなのでしょうか?

 

重力による位置エネルギーとは

地面からの高さh[m]にある質量m[kg]の物体が持つ重力による位置エネルギーの大きさは、以下の公式で表すことができます。

重力による位置エネルギーの公式
重力による位置エネルギー:mgh

単位は仕事や運動エネルギーと同じ[J](ジュール)で、重力による位置エネルギーは記号Uを使って表すことが多いです。
この式から、物体の持つ重力による位置エネルギーは物体の質量と高さに比例するということがわかりますね。「同じ高さでもより質量が重いものほど、同じ質量でもより高い位置から落ちたものほど危険である」ということがこの式からも理解できると思います。

では、この式はどうやって導き出されるのでしょうか?物理では一つ一つの公式の導出過程について正しく理解することが偏差値のアップにつながりますから、重力による位置エネルギーの導出過程についても、一緒に学習してみましょう。

 

重力による位置エネルギーの公式を証明する

地面から高さh[m]の位置にある質量m[kg]の大きさを無視できる物体を落下させた場合を考えましょう。重力加速度をg[m/s^2]とし、空気抵抗は無視できるものとします。

このとき、物体に働く力は重力のみです。地面に到達する瞬間に物体は「速さを持っている=運動エネルギーを持っている」はずですので、物体は重力がした仕事によって運動エネルギーを持つと考えることができます。
地面に到達する瞬間の物体の早さをvとしたとき、地面に到達する瞬間の物体の持つ運動エネルギーは\frac{1}{2}mv^2で、これが重力がした仕事に等しくなるということになります。

空気抵抗が無視できる状態では物体は自由落下しますから、自由落下の公式v^2=2ghより重力が物体にする仕事Wは

W=\frac{1}{2}mv^2=\frac{1}{2}m(2gh)=mgh

となります。
この式は高さhでの物体が持っていた仕事をする能力、つまり物体が持つ重力の位置エネルギーに等しいということになるわけです。

 


位置エネルギーは基準面を決めなければならない

重力による位置エネルギーを考える時に一つ決めなければならないことがあります。
それは基準面を決めることです。

重力による位置エネルギーは物体の高さに比例するので、基準面からどれだけの高さにあるかによって位置エネルギーの値は変わってきます。例えば建物の2階にある物体は地面を基準面としたときには位置エネルギーを持っていますが、2階を基準面にするときは位置エネルギーは0になるわけです。

問題を解く際は基準面はどこに設定したとしても、それが設定さえされていれば良いのですが、大抵は計算しやすい位置が必ずあります。ただ物理初心者の場合、慣れないうちは基準面を設定することを忘れてしまいがちです。まずは基準面を設定することを忘れないようにクセづけましょう。どう基準面を設定すれば計算しやすいかは、習うより慣れろです。問題をたくさん解いて色々なパターンを試しましょう。

位置エネルギーの問題を解く時の約束
位置エネルギーを決める時は必ず「基準面」を設定する

 

補足1:保存力について

重力のように、物体の位置エネルギーが定義できる力を保存力と呼びます
保存力には「力が仕事をした時、その仕事は経路によらず一定になる」という特徴があります。
こちらの詳しい話は力学的エネルギー保存の法則の記事を書くときに詳しくお話ししていきますので軽く覚えておいてください。

 

補足2:重力以外の位置エネルギー

位置エネルギーを定義できる力のことを保存力と呼びますが、それはつまり重力以外にも位置エネルギーを定義できる力があるということです。高校物理の分野では重力以外にもバネの弾性力の位置エネルギーと万有引力の位置エネルギーについて出題されます。

それぞれ個別での解説記事を書いていく予定ですので「重力以外にも位置エネルギーがあるんだ」と簡単で良いですから覚えておいてください。

 

まとめ

まとめ
重力による位置エネルギー:mgh

約束:重力による位置エネルギーは必ず基準面を設定することを忘れずに

ぜひ、本記事で解説した重力による位置エネルギーの公式は、自分でも導出の過程を説明できるように練習をしておくことをおすすめします。
特に基準面の設定ははじめのうちは忘れがちですから、何パターンも問題を練習して位置エネルギーを得意分野にしちゃいましょう!

力学についてさらに詳しく勉強したい方は、こちらのまとめ記事をぜひ参考に↓↓↓

【力学についてもっと詳しく学ぶ】
力学の要点まとめ【物理の偏差値を上げる方法】

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