この記事では力学で扱う基本的な力の一つである「張力」について解説していきます。
張力の性質は力学の中でも基本です。きちんと理解していないと、基礎的な問題でつまづいたりケアレスミスの元になってしまいます。
今回の記事では張力の基本的な性質の説明をしたのちに、実際の問題を出題して解くことで理解度を深めてもらいます。
- これから物理を学ぶ高校生
- 物理を得点源にしたい受験生
に向けて、できるだけ噛み砕いてわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後まで楽しんで読んでください。
目次
張力ってどんな力?
糸でくくった5円玉をぶら下げられたり、何百トンもある吊り橋をワイヤーで吊り下げることができるのには、張力が関係しています。
力学の分野では糸でぶら下げた物体や滑車など、張力が関係してくる問題が多く出題されるので、基本的な性質を覚えておくことが大切です。
受験で覚えておきたい張力の2つのポイント
大学受験で覚えておきたい張力のポイントは大きく以下の2つがあります。
ポイント②:質量は無視できる
詳しく解説していきます。
張力は必ずペアで現れる(作用反作用)
1つ目の性質は「張力は必ずペアで現れる」です。
作用反作用の法則を思い出してみましょう。作用反作用の法則とは「あらゆる力は単独で発生せず必ずペアで現れる」という法則でした。この法則は張力でも例外ではありません。
例えば壁に貼り付けた糸を手でつかんでの力で引っ張ってみたとしましょう。

この時、「手で引っ張った力とペアになる力=壁が糸を引っ張る力(反作用の力)」が働きます。

①手で糸を引っ張る力
②壁が糸を引っ張る力
の2つがペアとなりますが、厳密には間の糸にも張力は働き続けています。
糸を微小な区間で区切ってみたときに、図のように作用反作用の法則によって右向きにで引っ張る力と左向きに
で引っ張る力が連鎖して働いて、つりあいがとれた状態になっています。

微小区間ごとの張力はつりあいが取れているので無視できるため、両端を引っ張る力がペアになると考えることができます。
微小区間の張力の説明は以下のサイトで解説している記事が非常にわかりやすいので、参考にしてみると良いと思います。
【参照サイト】
張力(わかりやすい高校物理の部屋)
質量は無視できる
2つ目の性質は「質量は無視できる」です。
高校物理の範囲で扱う糸は、通常ものすごく軽いもので物体の運動に影響を与えるほどの質量を持っていません。
建築で扱う構造力学のようにワイヤーそのものがものすごく重い場合は話が変わってきますが、高校物理の範囲では基本的に無視できるものとしてOKです。
ちなみに記述式問題で「糸の質量は無視できるものとする」の一言が書けるか書けないかで減点されるかどうかが変わる場合もあるので、記述問題を解く時は注意しましょう。
記述式問題の解き方については下の記事を参考にしてみてください。
【合わせて読みたい】
物理の記述式問題対策!合格を勝ち取る答案の書き方たった2つのポイント
張力の問題を解いてみよう①:糸でぶら下げた物体のつりあい
では問題を解いてみて張力の理解度をチェックしましょう。まずは基本的な問題から。
質量の物体が糸でぶら下がり静止している。糸の質量が無視できる時、物体に働く張力
を求めよ(重力加速度を
とする)。

制限時間は3分です。ここから先は実際に問題を解いてみて考えましょう。
答え

【解説】
力のつりあいの問題の場合、まず物体に働く力を実際に図示してみることから始めます。それがこちら。

物体は静止した状態なので、鉛直方向下向きを正の向きとした時に以下の式が成り立ちます。
あとはこちらの式を変形して整えると張力は以下の通りです。
・・・(答)
張力の問題を解いてみよう②:複数の糸で引っ張った物体のつりあい
では次の問題。①よりやや難易度が上がります。
質量の物体が、糸でぶら下げられたのちに横から糸で引っ張られて角度
の状態で静止している。糸の質量が無視できる時、横に付けられた糸が物体に働かせる張力
を求めよ(重力加速度を
とする)。

①の条件に加えて、横から糸でおもりを引っ張った場合どうなるか?について考えてみる問題ですね。制限時間は5分です。
答え
【解説】
②の問題も力のつりあいについての問題なので、物体に働く力を実際に書き出してみるところから始めます。
力は水平方向と鉛直方向のそれぞれで分解してみましょう。図示するとこのようになります。

水平方向右向き、鉛直方向下向きを正とした時にそれぞれの方向の力のつりあいの式を立ててみましょう。
水平方向のつりあい:
鉛直方向のつりあい:
それぞれの式を変形すると
・・・①
・・・②
あとは①式に②式を代入してを消去すると答えが導き出せます。
・・・(答)
まとめ
張力の基本について学んできましたが、いかがでしたか?
張力は力学の分野の中でも基本中の基本ですから、しっかりと理解できるまで繰り返し記事を読み込んでください。読み込んで理解できたら、知識を定着させるために問題集などで例題も解いてみましょう。
では、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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